犬が死ぬのは飼い主に罪があるな。
俺が病院から帰された日、東堂さんはそう言って俺にリードをつけた。俺は椅子の足を起点にぐるぐると三回リビングを回ってそれから東堂さんを見上げた。
「わんって鳴く?」
東堂さんは俺の冗談に気分が悪いっていう顔をしたけれど、どんなに顔を歪めても、椅子の足を蹴飛ばしたりなんかは決してしない。良い飼い主だ。首輪だって馬鹿な俺が道に飛び出して死なないように気をつけてくれている。俺はいつだってなんでも自由にやるし、そういう俺が無謀な走り方をして事故で死んだのを自分の所為みたいに思ってくれているんだ。ただの一度、俺に「自由に走れ」って言ったから。
自由にしていいって言ったこと後悔してる?
厳しい顔をして東堂さんが呟く。
「……お前は犬じゃない」
「じゃあオレは東堂さんの何なの?」
「お前は俺の妄想だ。」
真波、と震える喉で東堂さんが呼ぶ。かわいそうだな、なんて見上げるオレは東堂さんの後悔が生んだ幻で、本当には存在しないので、部屋には今空っぽのリードが落ちているだけなのだけれど。
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