アスタル・テイムの首の後ろにちいさな火傷の痕があるのに気が付きましたので、それは何かと私は訊ねました。
「あー、これは事故だな」
爪先の割れた彼の指が、赤茶に変色した皮膚を抑えます。古いもののようでした。自分では見ることのできない場所なのに、迷わず正確に触れたところをみると他人から指摘され慣れているようです。それなのでその答えももう何回も口にした、というように多少に気だるげで面倒くさそうでした。
「ガキの頃だな。親父が俺を抱いてるときに、煙草を吸ってたんだよ」
おふくろがみつけて、声をあげてさ、そんでびっくりしたんだろうな。背中のことだから知らねーけど、親父が煙草を落としたか俺が急に動いたかしたんだろう。火傷はそんとき出来た。アスタル・テイムはそう言いました。家族の話を聞くのははじめてです。
「あなたにも両親がいたのですね」
「ろくでもねーけどな」
吐き捨てるような彼の言葉を私は聞きとがめました。家族のことをそんな風に冷たく言うのは寂しすぎます。
「確かに煙草を咥えたまま子供を膝に乗せる父親は褒められるものではないでしょうが、しかし子供を抱くという行為には愛情を感じます。不器用ながらも微笑ましい家族の温かみを想像させる」
私が言うと、アスタルは噴き出すように笑いました。
「ああ、そうか。『抱いてる』なんて上品に言ったからわかんねーんだな?」
いつも咥えている棒付きのキャンディをアスタルは口から離して唇を舐めました。多くの口寂しい兵士がそうするのとは違ってアスタルは煙草を吸いません。
「だからさ、親父が俺を後ろからファックしてる時に煙草を吸ってたんだよ」
だから俺は非喫煙者としかセックスしないんだ。アスタルの指がまた神経質そうに火傷の痕をなぞりました
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